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ヒッポの活動を応援してくださっている先生方

自然の中の謎解き~対称性~

坂東 昌子

( ばんどう まさこ )

愛知大学名誉教授・京都大学基礎物理研究所研究協力員(理論物理学)
言語交流研究所 理事

2010年ひっぽしんぶんNo.46

昨夏、京都大学基礎物理研究所で「科学としての科学教育」と題したシンポジウムがあり、丸山瑛一氏(理研特別顧問)の「科学は言語である」という立場からのアプローチは新鮮でした。このような実践がヒッポで取り組まれていることは、教育を科学にするための新しい視点を投げかけてくれました。ヒッポの活動については、南部陽一郎氏('08ノーベル物理学賞受賞)からも聞いており、私自身も興味を持ちました。

私の専門は素粒子物理学で、長年、湯川秀樹先生の研究室にいました。今では、文系の学生にも物理を教えるようになり、数式に苦手意識をもつ学生たちに、どう物理の本質を理解してもらえるかを考えるようになりました。物理の面白さは、ちょうど推理小説の面白さと似ています。推理小説では犯人は初めから用意されていて、読者は与えられた情報を手がかりに犯人探しをします。それに対して、物理学の相手は自然であり、自然の謎解きそのものです。その謎解きにガイドラインを与えるものが「対称性」です。

推理小説の場合でも、一見何の脈絡もなく起こる事件の中に共通する手口などを見出し、犯人を追いつめていく。それと同じように、物理は、一見乱雑にみえる現象の背後にある、隠れた規則性や対称性を発見する営みなのです。  私たちが法則を発見できるのは、自然に対称性があるからですが、それだけでなく、自然のもつ階層性のおかげでもあります。科学にそれぞれ特有の領域があり、分業可能なのも自然にそのような階層性があるからです。「次の階層からみたら、この現象はどう解釈できるか」と問う癖が素粒子を扱う研究者にはありますが、この好奇心が、異なる階層をつなぎ、新しい論理を見出す原動力です。

また、物理では、大局的にものを見るということをします。細かいこと、例えば分子レベルではそれぞれ違いますが、大きくものを見、捉えていくことで本質が見える。その本質を見ていきましょうということです。違う物事の中から同じを見つけ、そのエッセンス、真理を取り出すことをやっているのが物理なのです。南部氏の「自発的対称性の破れ」という研究成果は、このようなものを礎に導き出された概念です。

湯川秀樹先生が、ノーベル物理学賞をもらうにいたった中間子理論の論文は、初めから英文で書かれたものでした。先生は、日本で日常経験していること、今まで培ってきたものをしっかりと育てつつ、そこで新たに必要になってきた技術は西洋に学びながら、日本発の良いものを育て、発展させ、世界に発信するという考え方がその大元にありました。日本にいながらにして、世界のどこにもないものを創造する。ヒッポもまた、日本から世界に発信できる素晴らしい活動だと思います。(ワークショップ/東京・渋谷より)

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