国際交流(ホームステイ)
高校留学
プライスレス~お金では買えない体験
井上真澄 / 滋賀県大津市
「ヒッポの環境って凄い!」と家族全員で始めたものの、1年たたずにやめてしまった。もう二度とやることもないだろうと思っていた。ところが2年前の夏、学校斡旋の留学準備をすすめていた高1の娘が「なりたい自分になるために、ヒッポで行きたい!」と突然言い始めた。
それは家族にとって一大事。「メンバーでもないし」「お金もないし」「毎回ファミリーに通うこともできないし」の、ないないずくし。学校の留学のほうが「安心だし」「親はラクちんだし」「とにかく安い」。できることなら学校から留学に行ってほしいと願う私と夫。でも人間、決断すると強いもので、結局私たちが説き伏せられ、ヒッポに入り直し、同時にイヤロンの準備が始まった。知ってる人がほとんどいないヒッポの場は、国内であって外国のような感覚。自分から心を開かなくては何も始まらない。私たち親子にとっては試練であり、国内ですでにイヤロンが始まっている感じだった。
そして1年間たくさんのファミリーへ行き、関係を紡いできたたくさんの人に見送られ、アメリカへ旅立った。準備期間の1年だけでも娘は驚くほど成長していたけれど、現地での10ヵ月は親も想像できないほどの経験をして、心も体も逞しく成長して帰ってきた。「なりたい自分」に近づくことのできたその裏にはいくつもの困難があり、その1つ1つの出来事に向き合った日々があったからこそなのだ。私たち家族は帰国後に、そのことを知った。心配性の母をよく知っている娘は、一切のマイナスの情報を伝えてこなかった。何度もやってくるピンチに「強くなれ自分」と自分自身を励まし、目の前の人と向き合い、全てをチャンスに変えていった10ヵ月。帰国後に引き出してもらい話す娘は「つらいこともたくさんあったけど、イヤロンはその人に足りないものがちゃんと用意されていて、それを乗り越えた時にすべてがプラスになってちゃんと自分に返ってくる。だから自分のイヤロンも最後の3ヵ月は本当に楽しかったし、充実していた。どの人のイヤロンも比べられないし、どの人のイヤロンにも意味がある」と軽やかに言う。娘がヒッポで留学したいと言い出した時は「高い」と思った参加費が、出発する時点で「お得」と思え、帰国した今は「安いどころか、元は充分とれた!」と思っている。